27年度の経産省概算要求をめぐり、AX領域を中心とするフィジカルAI投資の構造と、現場実装に向けた企業別の恩恵仮説が整理されている。政府の狙いはAI・半導体を軸にした恒常的な成長投資の創出であり、2040年までの市場機会が示唆されている。
経済産業省が公表した令和9年度予算概算要求は総額7兆7,859億円に達し、従来の補正予算依存から初期段階での大規模成長投資を統合する方針が強調された。最大の構造転換は新設枠「強く豊かな日本」投資枠で、AX領域が最重点牽引とされた。投資枠の総額は約1兆9,913億円であり、対象はAI・半導体・ロボットの分野を含む。これにより複数年度の計画的執行が想定され、長期的な財政支援の枠組みが強化された。
「フィジカルAI基盤」と「AIロボット現場導入」の技術スコープでは、実世界のセンサーデータを前提とした推論とアクチュエータ駆動を伴う自律知能システム全体を指すと整理される。マルチモーダル基盤モデル開発事業ではLLMだけでなく映像・触覚・LiDARを統合するVLAモデルの開発が必須とされ、NEDO主導のFRONTia事業の動向も注目される。公募要件には自律制御ユニットのリアルタイム連携や現場適応性が求められている。
本政策の波及はロボティクスからセンサー・半導体・デジタルツイン・SIまで垂直統合的に及ぶ見込みであり、ファナックや安川電機、ハーモニック・ドライブ・システムズ、ナブテスコ、ルネサス、ソシオネクスト、日立、NTTデータ、PFN、Mujinなどが主要な恩恵対象として位置づけられる。特にデジタルツインとSI領域ではLumadaや自律データ連携基盤が連携基盤として要となる。
2040年までのロードマップは3段階の進化を描く。第1フェーズは基盤モデル確立と点の実装、第2フェーズは量産展開とライン自律協調、第3フェーズは社会基盤化・自律共生へと移行する。工場・物流・介護など産業領域ごとに自動化の対象と期間が異なり、エンド・ツー・エンド無人物流網の実現を目指す。