BYDが中国市場を席巻する中、日本車メーカーは撤退か全面現地化かではなく、データや技術をどう守るかのデリスキング戦略が問われている。改正国防動員法が2026年10月に施行され、現地資産と安全保障の関係が一層重視される見通しだ。
中国市場でのEV・SDV競争が激化する中、日本の自動車メーカーは中国における生産拠点や販売網、研究開発、部品調達といった資産をどう扱うかを改めて問われている。中国は世界最大級の市場であるだけでなく、EV・バッテリー・車載半導体・AI分野の最前線でもあり、日本企業は現地での資産をどう保全するかという課題に直面している。
現地には工場以外にも部品メーカーや物流網、販売網、アフターサービス、R&D拠点など多岐にわたる機能が根を下ろしており、グローバル・バリュー・チェーンの観点からはモジュール型の資産蓄積が進んでいる。EV化に伴い、バッテリー関連の調達網・車載半導体・ソフトウェア・車両データ・AI技術など、経営資産の領域が拡大している。
改正国防動員法の施行は、現地の工場や技術が直ちに動員されるとの短絡的解釈を避けつつ、現地資産と国家安全保障政策の結びつきを見据える契機となっている。平時から有事へ移行する際の制度設計を企業が認識し、データの取り扱い・保存場所・法制度の適用範囲を整理する必要がある。
データやソフトウェア、AIといったコア資産の管理については、現地化と本社直轄での管理を機能別に分け、デリスキングを進める戦略が重要になる。現地での生産・販売・アフターサービスは現地化を進めつつ、中核技術やソースコード、重要なデータは日本本社や第三国で管理する体制を整えるべきだ。
最終的には、撤退か全面現地化といった二択ではなく、何を現地化し何を本社で管理するかを境界線として設定し、状況に応じて境界を見直すデリスキング戦略が、今後の中国事業の持続性を左右する重要なポイントになる。