新書『なぜ賃金は上がらないのか 日本経済30年の陥穽』の刊行を受け、著者首藤若菜氏への直撃取材を通じて、賃金と物価の関係や中小企業の賃上げの現状が浮かび上がった。
今年に入り実質賃金がプラス基調を維持している一方で、頻繁に購入する品目の物価上昇は高水準で推移しており、暮らしの実感には差が生じている。高インフレの中で賃金と物価の差を感じる人が増え、格差の認識が強まっているとの見方が示された。
新書は賃金力学を現場サイドから検証した著者の視点を掲げ、零細企業の工場や物流現場を取材した結果を踏まえ、賃上げの実感と現状のギャップを指摘している。大企業の賃上げと同様に賃上げは続く可能性があるが、中小企業は資金確保の難しさから賃上げが進みにくいと述べられている。
現在の格差論は正規・非正規の雇用格差が軸だったが、最低賃金の引き上げで格差が縮小する面も生じていると指摘。今後は大企業と中小企業の格差問題が顕著になるとの見方が示された。
政府や経済団体、労働組合の賃上げ施策については、中小企業の実情を包摂できていない点が課題として挙げられ、賃上げ税制や最低賃金引き上げの議論が今後も続く可能性があるとの認識が示された。