今回の2週間でAI半導体市場はGPU中心の発注構造から、メモリ容量・先端パッケージ・サプライチェーン全体を巻き込む局面へ拡大した。HBMの供給比率や各社の新技術・ロードマップが次々と公表されている。
本稿期間に公表された主な動きとして、HBMを核とするDRAMの配分がAI需要で変化する見通しが強まった点が挙げられる。SamsungはHBMがDRAMウエハー生産能力の約20%を占め、2027年には約30%へ上昇すると述べ、AIデータセンターの拡大に伴うDRAMの需給が通常DRAMにも波及する可能性を示唆した。これにより、HBMと通常DRAMの比率をどう決定するかが、メモリメーカーの長期ポートフォリオ戦略の要となる。
次に、HBM4の実機適用が進展した。SK hynixはTSMC OIP ConferenceでVera Rubinに12層36GB HBM4と96GB SOCAMM2を搭載して展示し、HBM4EやHBM4の派生品も示した。AIサーバーのメモリ階層はHBM、SOCAMM、SSDの順で拡張され、メモリ周辺の設計統合が重要になる。
中国勢の動きも活発化。HuaweiはAscendロードマップを加速させ、960DTを2027年第1四半期、960PRを同年第3四半期に前倒し。Atlas 960E SuperPoDでNPUを大規模に束ねる方針を示した。AlibabaはZhenwu V900を発表し、前世代比3倍の性能を謳い、2027年初頭の量産を想定してクラスタ型展開を狙う。
台湾・高雄の先端パッケージ拠点づくりも本格化。白埔産業園区の起工により、TSMCを核とする検証・認定ラボや人材育成施設の整備が進み、2029年以降の稼働を目指す。これは先端パッケージ設備の増強を通じ、日本企業を含むサプライチェーン全体の評価・認定プロセスの地理的集積を後押しする。
Aureaの後工程強化を象徴する動きも出ている。SPILは雲林の新工場へ約NT$1000億を投資し、CoWoSを含む先端パッケージ能力を拡大、2028年稼働、雇用約2,200人を見込む。AI需要の拡大に伴い、後工程の設備投資も巨額化するとの見方が広がっている。
NVIDIA以外のAI推論エコシステムも実需が拡大。CerebrasとGimlet Labsは約100MW規模の大規模AI推論インフラをクラウドへ提供する契約を結び、非NVIDIA系のAIアクセラレータにもMW級の需要が付き始めている。
長期視点では、NANDのIn-Memory Computing研究が進み、データの移動を抑制することで電力削減と遅延低減を狙う。キオクシアは3D NANDで多値化を進め、データの保管だけでなく演算も視野に入れる研究を公開した。
全体として、AI半導体市場は「GPUそのものの性能競争」から「演算資源を動かすメモリ・パッケージ・電力・通信の統合競争」へと転換しており、供給能力のボトルネックを最小単位で見るべき段階に入っている。