機密データを外部に開示せず解析できる「秘密計算」を軸に、産総研とZenmuTechが社会実装を目指す。協業の起点から、データ連携を可能にする実践ツールの開発と事業化の動きを追う。
機密情報を守りながらデータ活用を進める技術として「秘密計算」が注目され、産業技術総合研究所(産総研)とZenmuTechは社会実装を目指す共創を進めている。データを複数の断片に分け、別々の計算機で処理して最終結果だけを取り出す手法が基盤となる。
協業のきっかけは2018年にさかのぼり、ZenmuTechの代表取締役COO兼CTO國井晋平が花岡悟一郎氏の元を訪れて信頼関係を築く過程が描かれる。初期には第三者による安全性証明の必要性を認識し、産総研の検証を得て共創を決断した。
2台構成での実用を目指す技術開発が進み、2021年には暗号データの並び替え(シャッフル)処理を100倍以上高速化する成果が生まれた。これを契機に、現場ニーズの把握と市場適用を加速させるべく、QueryAheadというツールを開発。
産総研とZenmuTechは企業間データ連携の現実化に向け、製造業のサプライチェーンでの活用を中心に検討を重ね、データを秘匿化したまま分析を行える仕組みを構築した。40社規模のコンソーシアム形成も進み、導入と実証を本格化させている。
2023年には産総研がAISolを設立し共同研究を推進、ZenmuTechはAISol出資を受けたうえで2025年に東証グロースへ上場。社会全体で秘密計算の利活用を広げる体制が整いつつある。
データを隠したまま活用する社会実装の道のりは多くの課題を含むが、AI時代のデータ重要性の高まりとともに、秘密計算の現実的な活用が企業間の協創を通じて進展している。