株価上昇や対外資産の増加、日銀の国債保有動向が家計の預金比率を押し下げる要因として提示され、資金循環の変化が“貯蓄から投資へ”を後押ししている。
本稿は、日本の家計預金比率が長期的に低下する背景を、マクロ経済の資金循環の視点から実証的に把握しようとするものである。資金循環統計において、家計部門が保有する金融資産は他部門の金融負債と対応しており、預金は銀行を介した信用創造を通じて増減するという考え方が示される。
家計預金比率の分母は家計部門の金融資産と、他部門のネット金融負債残高および家計部門自身の金融負債の合計に等しい。企業・政府・海外部門の資金調達の性質により、預金創造の経路が変化し、株式の時価上昇や国債保有の変化が預金残高に影響を及ぼす。
家計預金比率を分解すると、企業部門は預金比率を押し上げ、政府部門と海外部門は押し下げ要因となることが多い。時価等の要因は家計預金残高そのものには直接影響しないが、分母となる金融資産を動かす。直近では企業部門の影響が大きく、海外部門と時価要因が押し下げ要因として働く局面がみられる。
全体として、貯蓄から投資への動きをマクロ視点で見ると、資金循環の構造変化と国債の保有主体の変化が、家計預金比率の低下を後押ししていると整理できる。今後もこのマクロ構造の動向が、家計の金融資産選択にどう影響するかが注目される。