日銀総裁・黒田東彦の回顧録「独白 デフレとの闘い」が出版され、デフレ脱却を日銀の“役割”と捉えてきた黒田の思いと、かつての財務官僚・塩川正十郎との交友があらためて紹介された。就任直後の挨拶でデフレ15年の現状を指摘し、物価安定の責任を日銀が担うべきと語っている。
回顧録「独白――デフレとの闘い 異次元緩和の10年と物価安定の真実」(光文社)に基づき、日銀総裁・黒田東彦のデフレ脱却への認識と日銀の役割が描かれる。黒田は財務官時代の塩川正十郎との交友エピソードを通じ、塩川の政治家としての役割理解の深さに触れる。
塩川は2001年に財務大臣を務め、黒田が随伴して訪米した際、塩川は資料の説明より自らの言葉で運営方針を語り、オニールは塩川の発言を評価する場面があったと記される。このエピソードから、塩川の「役割」を理解する姿勢が浮かぶと黒田は回想する。
就任直後の挨拶では、日本経済が1998年以来15年ものデフレに苦しんでおり、中央銀行の使命が物価安定であるなら日銀はそれを果たしてこなかった可能性があると指摘。黒田は物価を長期的に安定させることが中央銀行の役割だと強調し、デフレ脱却こそが日銀の責務であると認識していた。
本書では、黒田が総裁としての原稿執筆を限られた時期に留めた点や、就任当時の記者会見で掲げた「トリプル2」などの政策アイデアが取り上げられる。塩川の「総長の仕事は挨拶」という言葉と重なる部分があると締めくくられている。