RIETIの寄稿で、インフレが政府に一時的な財政余力を生む仕組みと、それが財政従属へ傾くリスクを政治と日銀の二者ゲームとして整理した。過剰債務下で均衡が変化する点にも言及している。
日本経済はデフレからインフレへ移行する中、名目所得・企業利益・消費の増加により税収が弾力的に増える一方、年金・医療・公務員給与などの歳出は制度や予算編成のタイムラグで追随が遅れ、一時的な財政余力が生じる。
この財政余力は実質価値の目減りを伴い恒久財源にはなり得ず、有権者への直接的なアピールとなる再分配と、財政再建という長期的視点の間で政治的意思決定プロセスの誘因が衝突する。さらに、時間的不整合性の問題として、事前に望ましい政策と事後に選ばれる政策が一致しにくい構造が指摘される。
政府と日銀の間には二者の戦略が存在し、通常時は財政余力を再分配と金融正常化へ組み合わせる組合せが最適とされる。しかし過剰債務下では日銀の利得構造が変化し、均衡は再分配と金融正常化の先送りへ移る可能性が高まる。
本論は通時的(動学的)ゲームとして、予算編成と金融政策決定が反復される中で市場の期待が政策反応を形成し、一時的な財政余力が恒久財源と誤認される事態を回避する方策を示唆している。
2026年9月11日 日本経済新聞「経済教室」掲載、2026年9月30日掲載という情報も併せて言及されている。