人的資本経営の課題として、キャリア自律度と組織の成長支援環境の実態を大規模データで可視化した調査結果が公表された。職場の安心感は高い一方で、将来設計を描く力や主体的な挑戦行動が低水準にとどまる点が指摘されている。
一般社団法人プロティアン・キャリア協会と4designs株式会社が提供するキャリア開発診断データ(有効回答19,154名)を用いた大規模AI解析調査の結果、日本企業におけるキャリア自律と組織環境の実態が明らかになった。調査はキャリア自律度と組織の成長支援環境の両面を分析し、キャリア目標の形成と主体的実践を促す組織づくりの課題を示した。
1) 職場関係性の満足度は高い一方、主体的挑戦には結びつきにくいという日本型キャリア停滞が示された。職場関係性の満足度は高いが、将来に向けたキャリア目標は低く、主体的実践のスコアには差がみられた。働きやすさの向上は進む一方で、将来設計を具体化する動きが不足している実態が浮かび上がった。
2) 現在の仕事へのエンゲージメントは高いが、将来像を描く力は伸び悩んでいる。エンゲージメントは高水準の76.4pts、キャリア目標は60.7ptsと大きなギャップが残り、組織環境への満足が主体的行動につながりにくい層が多いという傾向が確認された。
3) 年齢とともに自己理解は深まる一方、全世代でキャリア目標が低く、将来像の描画が共通課題となっている。自律は年齢とともに高まるが、組織環境の満足度は若年層で高く、年齢とともに緩やかに低下する傾向が見られた。
結論として、企業は安心して未来を語れる環境づくりと、将来像を具体化するキャリア目標の形成支援を同時に進める必要があるとの示唆が得られた。更なる投資は、個人の能力だけでなく組織の成長支援機能の強化を通じて、変化の時代に適応する従業員の自律を促す可能性がある。