坂村健氏は、日本のデジタル敗戦の現状を指摘し、トロンが世界で普及した背景を挙げつつ、日本企業の閉鎖的発想を改め、エコシステムの構築が不可欠だと語った。
トロンは機器に組み込むOSとして世界の多くの電子機器に採用されているが、ウィンドウズのように目立つ存在ではない。日本がデジタルで遅れているのは、日本企業の考え方が時代に合わなくなっていることが原因とされ、組織は一度定着したやり方を変えにくいとの指摘がある。
現場の社員は優秀でも、システムを変えず乗り切る傾向が強く、結果として古いシステムを温存して全体最適が達成されにくくなるという。日本企業は部門単位の最適化を重視し、全体最適の発想が難しいとも説明された。
零戦の例を挙げ、部品仕様の共通化が難しかった点と対照的に、米国では大量生産と部品・製造技術の共通化が進んでいると指摘。局所最適の発想では世界標準となるシステムを生み出すのは困難だとされる。
日本企業が自社技術をオープンにして他社と連携し市場を広げるエコシステムを作ることは苦手で、世界で孤立する傾向があると指摘される。トロンが普及した理由は、初めから世界規模で考え技術を公開した点にある。
坂村氏は二十年以上前から閉鎖的な発想を改めるべきだと訴え、日本にはデジタル分野で挽回する力があるとする。ただし原因は複合的で、一つを直せばよいというものではなく、問題点を正しく認識して一つずつ変える必要があると結論づけた。