ホテルを裏付けとする不動産デジタル証券(ST)の分配率は公表5案件で2.5%〜5.6%と幅があり、1室あたりの取得単価は960万円〜1億8801万円程度と大きく差がある。借入比率の違いが分配原資に影響する一方、全額エクイティ案件も存在する。
ホテルを裏付けとするデジタル証券(ST)について、公表された5案件を横並びに整理すると、1口10万円〜100万円の小口化形態で、予想分配率は2.5%〜5.6%、運用期間は案件により10年を超えるケースがある。横浜伊勢佐木町ホテルを裏付ける案件は1口50万円で年4.1%の想定分配率、全額エクイティの設計となっている。一方、京都三条と舞浜エリアの案件では3.5〜5.6%の分配率が示されており、資本構成(借入比率)によって差が生じている。
表2の検討から、1室あたりの取得単価は960万円(横浜)から1億8,801万円(W OSAKA)まで大きく開く。分配率はこの順序と反比例する傾向が見られ、資産規模が大きく高単価となる案件ほど分配率が低くなる傾向がある。横浜案件は借入を使わない全額エクイティ設計で、レバレッジを前提とせず高いキャッシュフローの安定性を狙う構造である。
LTV別の感応度では、借入を使うほど分配利回りが上昇するが、金利上昇と NOIの下振れが同時に重なる局面では差が縮小し、LTV60%の利回り上昇幅はわずか0.15ポイント程度まで小さくなる。京都案件の借入条件には円TIBOR基準の変動金利とリファイナンスリスクが明記されており、運用期間10年超の長期性が影響することが示される。結果として全額エクイティの器は、期中の金利リスクを回避する一方で平時の上乗せ利回りを放棄する代わりに安定的なキャッシュフローを目指す設計と読み取れる。
REIT比較では、上場ホテルREIT7の国内物件の中央値は2,441万円/室で、横浜案件の960万円/室はこの中央値の下位帯に位置する。最高帯の1室あたり1億2,029万円/室(京都)や1億8,801万円/室(W OSAKA)は、REITポートフォリオの中でも非常に希少な高単価資産となる。 STはREITが買わない低価格帯と高価格帯の両端にまたがって広がる性質を持つ。