日本のGX-ETSは2026年に義務化へ移行し、国内排出量の大半をカバーする制度設計となった。世界銀行のデータと比較分析を基に、日本の現状と主要市場との立ち位置を整理する。
日本のカーボンプライシングは2026年に大きな転換点を迎え、GX排出量取引制度が自主参加から義務化へ移行した。世界銀行の地図上で本格的な全国ETS導入国として位置付けられるようになり、日本の市場基盤は他国と比べて前進した点が指摘されている。
GX-ETSは初期割当を2026年度から2032年度まで全量無償で実施する点が特徴で、対象は発電・鉄鋼・化学・セメント・製紙などの業種や貨物自動車運送・国内海運・航空も含まれる。企業が市場から排出枠を購入する必要が発生するのは無償割当を上回る排出量が出た場合だけとなる。
世界銀行のデータによれば、GX-ETSのカバーは日本国内の温室効果ガス排出量の約60%とされるが、制度上のカバー率と実際の市場負担は異なる可能性がある。EU-ETSや中国・韓国など主要市場との比較では、価格水準だけでなく無償配分の比率やオークションの有無が実効的なコストに影響する。
市場価格は義務化直後でまだ形成途上だが、参考上限取引価格は4,300円、調整基準取引価格は1,700円と設定され、価格が継続的に両価格を上下する状況を想定した調整機構が設けられている。CBAMとの関係では、国内価格だけでは控除が自動的には発生せず、国内市場の実効的な炭素負担が鍵となる。
政府収入面では、EU-ETSをはじめとする国際市場ではオークション収入が大きい一方、日本は初期割当が無償のため当面の政府収入は限定的。2033年度以降の有償オークション開始や化石燃料賦課金の拡大が財政と移行投資の転換点となる見通しである。