ヤマザキマリと清野由美の共著『蛮族の襲来 ヤマザキマリが大いに語る』のはじめにと目次の内容を要約。現代社会の変化を古代ローマの崩壊と対比し、知性の価値が問われると論じる。
本書は古代ローマの時代背景を描き、五賢帝の治世から経済の崩壊、傭兵への依存へと至る歴史を概観する。土木技術の粋である水道橋やローマ街道が整備され、ローマ市民としてのアイデンティティが強調されたが、帝国は分裂と混乱を経て衰退していった。
この歴史的枠組みを用いて、現代社会の移民問題や物価高騰、情報の氾濫といった現象を「蛮族の襲来」という比喩で読み解く試みが語られる。自由・平等といった価値観の揺らぎや、 SNSを介した拡散による知性の価値の低下といった課題が指摘される。
著者は「蛮族の襲来」は直接的な移民事象を指すものではなく、現代社会の変化に対する恐れや不安を表す比喩だと説明する。祖父母の世代が築いた戦後の平和と豊かさを維持する難しさが強調され、現代における知性の役割が問われている。
この危機を打開する存在として「ビジョナリー」と呼ばれる天才的想像力を持つ人物を挙げ、近代の文化人や芸術家の役割を例示する。ヤマザキマリを現代の水先案内人として位置づけ、未来を指し示す試みを読者とともに展開していく意図が示される。