著者は生産性の議論の根本には需要の拡大が必要だと説き、ビジネス現場と経済全体の生産性の違いを整理した。分母だけをいじる従来の議論を超え、分子を増やす政策の重要性と内需拡大の必要性を強調している。
日本の生産性論は、企業の効率化やコスト削減といった“分母”の改善に偏りがちだが、経済全体の生産性はアウトプット価額(価格×数量)の総量で決まるという学校教育的な定義と整合させて整理されている。著者は、ミクロとマクロの生産性の違いを明示し、真の分子の成長が不可欠だと主張する。
ミクロの要因としてIT投資の遅れや長時間労働、マネジメントの弱さ、中小企業の多さ、過剰品質、労働市場の流動性の低さが挙げられるが、これらは需要不足というマクロ環境の“症状”にすぎず、分母の改善だけでは解決しないと指摘する。
分子を増やす政策として、内需の積極的な拡大と名目GDPの持続的拡大が必要だと述べる。所得の増加と高付加価値財・サービスへの需要転換が進む経済では、アウトプット価額が増え、生産性が高まりやすくなる。
結論として、生産性は努力だけで持続的に上がるものではなく、経済が広がる局面で自然と押し上げられる。従って政策は“分母をいくら改善しても意味が薄い”現状を前提に、内需とアウトプット価額の拡大を中心に据えるべきだ。